covid-19が流行した2020年。本当はオリンピックの年でしたので、航空業界としては本当は稼ぎ時でした・・・。それが真っ逆さま。諸外国の航空業界以上に厳しいと言えるでしょう。2015年には東京オリンピック・パラリンピック推進本部を副社長をトップに据えて進めようとしていました。
オリンピックのことなんて、すっかり忘れてた!
大企業で安心!と思っていたのに、人員削減とか急だよねー
なぜ、人員削減を急ぐ必要があるのか。財務諸表を見ていけばわかるかもしれないですね!
財務諸表って何?
※そんなあなたは↓↓↓↓
全日本空輸株式会社(ANA)
JALもANAも言わずと知れた、あこがれの航空会社という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。しかし、コロナの影響で大きな影響を受け、大幅な人件費などの削減に踏み切っています。
今日は全日本空輸株式会社について解説したいと思います。
今回は決算短信、次回は決算説明会について解説いたします。
損益計算書
売上高は昨年の第三四半期累計が1兆559億円であったのに対して、今年の第三四半期累計は2,918億円です。前年同期比で△72.4%もの差額を計上しています。
売上総利益ベースで2020年は△1898億円の赤字計上です。2019年の粗利を見ても粗利率は23.89%とそこまで高い粗利益水準でないこともわかります。
従業員の給与の項目を見ていきたいと思います。です。184億円から154億円に30億円ほど削減をしていますが、、、あれ、小さくない??と思いませんか?「これがなくなっても赤字なくならないじゃんと」サービス業は一般的には原価項目にサービスにかかる人件費は計上しますので、8,033億円(2019年)4,817億円(2020年)に人件費は含まれていると思われます。
また、減価償却費も次に大きいのですが、これは航空機の価値を減少させる費用化項目につき、多くはリース契約と言われていますが、途中解約は難しいものがほとんどであり、この資産に関しては計上せざるを得ません。
※減価償却費=固定資産の資産価値を減らしつつ、費用換算する処理です。
※「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の2つに分けられますが、「日本型オペレーティングリース」と呼ばれる形式になるようです。航空機リースに出資する側の立場では節税効果が望め、航空会社としてはキャッシュアウトを遅らせることができます。以下記事の2.2項目がわかりやすかったので、参考にしてください。
また、キャッシュを得るためか固定資産売却益を得ています。しかし、18億円という微々たるものと言わざるを得ません。貸借対照表で何を売却したのか考えたいと思います。
営業利益ベースでは△2805億円の赤字です。2019年の営業利益もそんなに大きくなく、788億円で、7%程度の水準です。華やかなイメージは高給与によるイメージかもしれませんね。
やはり、航空機の原価償却費や人件費といった固定費が重くのしかかっています。
定性的情報
セグメント別に見ると、当然ながら中心事業である航空事業の売上減少額が一番大きい。しかし、着目すべきは事業として全セグメントで売上減少となってしまっている事でしょう。
航空事業は2019年は9,300億、2020年は2,367億円、マイナス幅は△6,933億円、マイナス△74.5%の下げ幅です。
航空関連事業は△292億円、△19.6%です。
旅行事業は△685億円、△83.2%です。
商社事業は△377億円、△49.6%です。
その他事業で△24億円、△11.6%です。
もし仮に航空関連事業が維持だったとしたら7,922億円になり、△14.81%です。
金額が大きく違いますし、ありえない仮説ですが航空事業の金額幅があまりに大きいですね。
営業利益は2019年は788億円でしたが、2020年は△2,809億円です。
この営業利益・損失をセグメントで見ていくと
航空事業は△2,777億円、航空関連事業は87億円、旅行事業は△40億円、商社事業は△28億円、その他事業は8億円となります。航空関連事業は昨年対比で利益が唯一向上しています。
経常利益は2019年は567億円、2020年は△1,884億円です。2,451億円のマイナス幅です。
セグメント別営業利益を見ると、ANAの社内事情はより明確に航空事業のセグメントの業績に大きな影響を受けるものと分かります。
航空事業の内訳
国際線と国内線で旅客収入が分かれています。
国際線
国際線の旅客収入は△94.2%となっています。コロナの影響を真正面から受けているのが国際旅客事業と言えるでしょう。旅客数が約490万人も減少となっています。前年対比△96.3%となります。
国際事業は特に96%も旅客数が減少してしまっています。517万人が19万人になるなんて、通常時は考えられない事でしょう。
また、特に2020年は旅客数はオリンピックの影響で増加を予定していた事でしょう。
国内線
国内線では、国際線と比較して減少幅が少しだけ小さいですが、それでもかなりの数が減っているのは明らかです。
旅客収入は3,687億円から789億円へ△2,898億円、△78.6%となっています。
旅客数は2,310万人から467万人へ△1,843万人、△79.8%となっています。
特に減少幅が大きいのはやはり国際線ですが、旅客数は圧倒的に国内線の方が大きいです。
国内需要の戻りがGoToトラベルに期待されていましたが、どうなっていくでしょうか。
国内旅客数も2,310万人から467万人へ△1,843万人ですから、考えられない数字でしょう。
貸借対照表
貸借対照表を見ると、総資産は2兆7,446億円です。負債は1兆8,544億円、自己資本は8,902億円です。有形固定資産が1兆5,466億円です。皆さんも想像している通りかと思いますが、航空機が最も資産の価額が高く、1兆1,267億円です。負債のほとんどは航空機に充てられていると言っていいでしょう。また、昨期に1兆1,575億円だったのを見るとほとんどここに動きはありません。簡単に手放せるものではないと言えるでしょう。
固定資産の売却を行ったものがどれかみたいですが、わかりませんでした。。△340億円は固定資産が減少していますが、内135億円は減価償却費なので、305億円分(340-135)を様々な固定資産を売却し、18億円は上乗せで獲得できたということでしょう。
自己資本比率は32.43%です。固定費が大きい企業としては自己資金でまかなえている資金比率が高い、企業体質と言えるでしょう。
現金資産は1,094億円から4,329億円に3,235億円増加しています。一方で有価証券の額は1,292億円から192億円まで下がっており、昨年と比較して△1100億円となっています。
また、借入金に関しても大きく増加しています。短期借入金が4億円から1,022億へ1,018億円増加、長期借入金も4,169億円から8,070億円へ3,901億円増加しています。
逆に利益剰余金は5,508億円から3,612億円に1,896億円も減少しています。あと2期程同様の赤字計上をしてしまっていると、単純に言えば利益剰余金を吐き出してしまう計算です・・。
損失が出ている状況なので、現金資産を手元に残すような資金繰りをしています。
利益剰余金の減少額もかなり大きいものです。
キャッシュフロー計算書
営業キャッシュフローは△1,909億円となり、投資キャッシュフローは372億円、財務キャッシュフローは4,694億円となります。完全に困窮しているキャッシュフローです。営業キャッシュフローのマイナスを資産の売却や借り入れで支えているという形です。好ましくない状況です。業績が回復しても売上の回復の原資となる資産の売却を進めていくと回復はどうしても遅くなります。
営業赤字で現金資産がピンチに!それをものを売ったり、借金したりでしのいでいるような状況だよ!
説明会資料
次回は説明会資料を解説します。
※この記事は全日本空輸(ANA)のIR情報を基にまとめております。
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