先日こんなニュースが出ていました。
物価が上がり続ける欧米・下がり続ける日本・・・
すごいタイトルだね。
物価が下がるってことは例えば100円だったキャベツが70円で買えたりすることだよね?
いいことじゃない?日本の方がいいってこと?
単純に言えば、そういうことなんですが、物価の上昇は経済の発展も伴っていることもあり、一概にいいとは言えないのです。
インフレとかデフレとか聞いたことある人も多いのではないでしょうか?
聞いたことあるけどなんだかわかっていないや。
この記事でわかること
- なぜアメリカは物価が上がり、日本は下がるのか?
- インフレ・デフレって何?
- 診断士の経済学はこんな形で生かして考える。
アメリカの物価が上がり、日本は下がる理由
上記のニュースでは以下のように記載されています。
日本の4月の消費者物価指数(CPI、総合)は前年同月比0.4%低下と7カ月連続のマイナス。携帯大手各社による通信料値下げなどが影響し、低下幅は4カ月ぶりに拡大した。 米欧ではエネルギー価格の上昇や財政出動による景気回復観測、新型コロナウイルスのワクチン普及期待などを背景にインフレが加速した。米国では4.2%上昇と2008年以来の大幅な伸びを記録し、ドイツでは2.1%上昇と19年以降で初めて2%を超えた。 Bloombergより
2020年はどの国もコロナの影響で物価下落があったものの、回復基調にある国と下がってしまっている国が顕著です。
米国とドイツはコロナ前水準に戻し、それ以上になっていることがわかります。
一方、日本はこの四ヵ国の中では唯一のマイナス圏になっています。
この要因の一つは「商慣習」です。
欧米諸国は原材料価格の上昇分を消費者へすぐに転嫁するのに対し、日本の商慣習では顔色を見ながら調整することが多いです。ここは営業をやっている方なら経験したことがあるのではないでしょうか。
そしてもう一つは「GDPの回復」ではないでしょうか。
アメリカでは3期連続で回復傾向にあり、日本ではマイナスです。
インフレとデフレ
物価はなぜ下がるとよくないのでしょうか?先に話していた通り、ものが安くなるのはいい気がしますが、日本銀行でも物価の上昇を目標として掲げています。
デフレは何が悪い?
結論からいうと経済が停滞してしまうから悪いといわれます。
楽天証券のトウシルの記事では以下のように記載されておりました。(わかりやすいので抜粋します)
デフレになると物価の下落で、企業収益が落ち込むため、倒産も増え、失業率が増加します。 失業が増えると消費が落ち込み、さらに物価が下落する悪循環に陥ります。 これが「デフレスパイラル」です。 トウシルより
この構造を視覚的にみると以下のようなイメージです。
このため、デフレは一般的によくないこととされ、経済成長とともに物価は上がるべきといわれます。
インフレならいいのか?
一方で、インフレならいいのかといえば、簡単な話ではありません。
負のインフレスパイラルという言葉もあったりします。この構造は以下のような構造です。
「物価上昇はつまり自国の価値を相対的に下げることになります」
例えばベネズエラでは268万%という驚異のインフレ率で経済が破綻しました。
1年間でです。
昨年まで100均で売っていたものが268万円出さないと買えなくなったのです。
お茶も飲めないですね・・・
正常なインフレ現象の場合は、経済成長が伴います。
しかし、経済成長が伴わないインフレはバブルとなってしまいます。
日本でのバブルはご存知だと思いますが、世界的に有名なのはオランダのチューリップ・バブルです。
経済成長を促進していくために物価の上昇が伴うことは必要ですが、経済成長を伴わないのであれば物価をコントロールしていくことが必要となります。
これに各国の中央銀行は敏感になっており、流通量を決定しているのです。
診断士の経済学の活かし方
中小企業診断士の試験では1次試験と2次試験があります。
その中でも1次試験は範囲が広く7科目あります。その1科目が経済学です。
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
IS-LM分析
この分野一つでも非常に多くの範囲を扱うことになります。
その一つの分野に「IS-LM分析」というのがあります。
財市場の均衡条件を表す IS 曲線と貨幣市場の均衡条件を表す LM 曲線を描くと、IS 曲線と LM 曲線の交点として財・貨幣同時均衡状態における国民所得と利子率が求められる
wikipediaより
IS曲線は「所得=所得-貯蓄+投資」となり、利子率が高い場合は投資によるリターンよりも貯蓄のリターンが高いため投資は活発に行われないものです。逆に利子率が下がれば投資が増加し、財資源は不足気味になります。そのため、生産を増加させ、結果所得の増加につながります。
銀行預金が低いというのはこの率が低いので投資に金が回るというものです。
銀行から3%で借りれて、長期的に5%運用を目指せるなら投資しますよね。
LM曲線は「貨幣需要量 = 取引需要 + 投機的需要」となり、利子率が高い場合には同じく投資などの投機的需要は減少します。そうすると貨幣供給は過多で残ることになり、所得が増加することになります。
投機的な需要が減少することにより、取引需要側に回るということです。
財市場と貨幣市場の均衡こそがIS-LM分析です。
コロナの影響での金銭バラマキ
このISーLM分析をより右側にシフトさせることが国民を豊かにすることです。
そのための金融政策を見てみましょう。
- 公定歩合操作
- 公開市場操作
- 法定準備率操作
今回の政府の金融バラマキなどは政府の国債を日銀が買って、金銭を事業者や国民に配り、市場流通のマネーを上げたものになります。
今回は2番の「公開市場操作」となりますが、その中でも「買いオペ」と呼ばれるものになります。
一般的には以下のような流れとなります。
買いオペ
↓
貨幣流通が増加
↓
金利を引き下げ
↓
金が借りやすくなり、投資が活発化
これは「拡張的金融政策」と呼ばれ、LM曲線を右シフトさせることで国民所得の増加を目指すものです。
こんなことを意識してみてみると物価を上げようとしていることや中央銀行がやっている活動の意味合いが見えてきて楽しいのではないでしょうか?
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